~ 第1回:兎の形と、恐竜との比べっこ ~

(自作 参考:頭骨大図鑑Skulls P91 ニホンノウサギ頭骨)

今回は前回の最後に予告した通り、2023年の干支に因んだウサギ回をしていきます。

因みにウサギの祖先の化石は約5300万年前の()新世(しんせい)*から発見されており,現生(げんせい)(しゅ)では鹿児島県(かごしまけん)(あま)()大島(おおしま)と,徳之島(とくのしま)に生息するアマミノクロウサギ*が最も古く,化石は約150万年前の更新(こうしん)(せい)*から発見されているそうです.

(アマミノクロウサギ : 千葉県立中央博物館 企画展『ほにゅうるい』2019年撮影)

1).はじめに

挨拶回に続く投稿が雑談回なのは如何なものかと自問しましたが、こちらは元々、勝山恐竜研究会の通信である『SAURS No.32』用に書いていたものが、長くなりすぎてしまったため、通信に投稿したものを「ライト版」とし、ブログで「完全版」と称して投稿することにしたものです。

内容的には、よもやま話程度に思っていただけたらと思います。

(参考:勝山恐竜研究会通信「SAURS No.30」の表紙)

2).ウサギな…恐竜?

ウサギのような恐竜を探すにあたり、始めにウサギの特徴“ウサギらしさ”を 形,食べ物,行動・生態の3つに分けて整理し、その後にこれらの特徴を持つ恐竜を探すという風に進めるつもりでしたが、結論を書いてしまうと、残念なことに、ウサギのような体の形をし、ウサギのような物を食べ、ウサギのような行動をする、3つ全てが似ている“ウサギそっくり”の恐竜はいません。

3).そもそもの話

ウサギは私達と同じ哺乳類(ほにゅうるい)*の仲間であり、恐竜はワニなどと同じ爬虫類(はちゅうるい)*の仲間です。これらの祖先は3億年以上前の石炭紀(せきたんき)*に、羊膜(ようまく)動物(どうぶつ)*の2つの大きな系統(けいとう)*として分かれた遠い関係性にあります。また、ウサギと恐竜では生息していた時代も環境も異なっています。そのため、仮に恐竜の中にウサギそっくりなものがいたとしても、直接的な関係ありません。

(羊膜動物の系統図 (左) / 爬虫類の主流となった双弓類(そうきゅうるい)*と哺乳類が含まれる(たん)弓類(きゅうるい)*の頭骨の違いについて (右):福井県立恐竜博物館 2F 2022年撮影)

しかし、幅の狭い頭骨といった体の形や、植物食であること、巣穴を掘るといった生態など、部分ごとに比べてみると、似ている点が見えてきます。

よってここでは、この投稿を含め、以下の全3回に分けてウサギと鳥を除く恐竜、いわゆる非鳥類型(ひちょうるいがた)恐竜(きょうりゅう)*を比べながら、それぞれで見られるウサギと恐竜の共通点を大雑把(おおざっぱ)に見ていきます。

  • 第1回:兎の形と、恐竜との比べっこ
  • 第2回:ウサギの食べ物と、恐竜との比べっこ
  • 第3回:うさぎの行動・生態と、恐竜とのくらべっこ

4).ウサギの“ウサギらしい形”

ここではウサギの特徴のうち、“ウサギらしい形”について、ウサギ科*全体から大雑把に見ていきます。

【骨格】

  • 眼窩(がんか)*が大きく,頭骨の左右幅は狭い
  • 上顎の大きい2本の前歯
  • 前歯を補強する小さな2本の歯
  • 薄いが筋肉がつく(けん)(こう)(きょく)*が発達した(けん)甲骨(こうこつ)*
  • 細く弓なりになった(とう)(こつ)*、(しゃっ)(こつ)*
  • 5本指の前肢
  • 腰付近の背骨の発達し,横に張り出す(おう)突起(とっき)*
  • 前肢より長い後肢
  • 途中から一体化する(けい)(こつ)*、()(こつ)*
  • 踵から先が大きく発達している
  • 4本指の後肢
(ニホンノウサギ*:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影)

【生体】

  • 真横についてほぼ360度見渡せる目
  • 前後左右に顎を動かして咀嚼(そしゃく)*する口
  • 耳が長い種は,自由に()(かい)*が動く
  • 長い耳は体温調節の役割もある
  • はさんで物を持てない前肢
  • クッションと消音器*になる後肢足裏の毛
  • 尾が短い
  • 積雪(せきせつ)地域(ちいき)の種では体毛の色が変化する
(ニホンノウサギ : 千葉県立中央博物館 企画展『ほにゅうるい』2019年撮影) ※剥製なことには目を瞑る

5).骨から見ないと始まらない

恐竜の体については基本的には骨だった部分しか見つからず、皮膚や内臓の情報が化石として残るのは珍しいため、恐竜や他の動物と骨を比べていくことになります。

骨の形について正確に比較して、類似点や相違点を探すには解剖学(かいぼうがく)的*な知識が必要です。

ただ今回は、私が解剖学的な部分について鋭意努力中のため、解剖学的正確性を横に置いて大雑把に見ていきます。

・5-1:頭の骨

まず、眼窩が大きいという点では原始的な(ちょう)脚類(きゃくるい)*のヒプシロフォドン*が上げられますが、そもそも小型恐竜の多くに見られる特徴で、頭骨の左右幅は狭いという点は更に多くの恐竜がそれにあたり、特に(じゅう)脚類(きゃくるい)*の多くは幅の狭い頭骨を持っています。

(ヒプシロフォドン / アロサウルス*:福井県立恐竜博物館 1F 2020年撮影)※ヒプシロフォドンの頸骨が実際より多い事に注意

上顎の大きい2本の前歯という点では、オヴィラプトロサウルス類*のインキシボサウルス*という恐竜の上顎の前方の歯が大きく、植物を食べたことによる摩耗(まもう)も見つかっており、使い方も植物を噛み切るといった様に、ウサギの前歯に似ていたかもしれません。

しかし、インキシボサウルスの大きな歯は前上(ぜんじょう)顎骨(がくこつ)()*であり、ウサギの場合は上顎(じょうがく)(こつ)*の前歯(門歯(もんし))*が発達しているので,あくまで見た目や使い方が似ているだけのようです。

(自作 参考:頭骨大図鑑Skulls P91 ニホンノウサギ頭骨 / 自作 参考:獣脚類-鳥に進化した肉食恐竜たち- 図録 P57 インキシボサウルス頭骨)

・5-2:前肢の骨&肩周りの骨

ウサギも含め哺乳類では、肩甲骨突起や隆起箇所がハッキリしており、そこに筋肉や靱帯(じんたい)*を付着します。肩甲骨に発達する肩甲棘も哺乳類では広くみられ、ウマやウシ、クジラ、ライオン、ニンゲンなどにもありますが、ウサギのものは特に発達しており、鈎状(こうじょう)になっています。

(ニホンノウサギ肩甲骨:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影 / アナグマ*:福井市自然史博物館 2023年撮影)

恐竜の肩甲骨の場合にも筋肉や靱帯の付着部は隆起して発達していますが、肩甲棘がないなど、哺乳類の肩甲骨と比較すると(なめ)らかで異なっています。

(エドモントサウルス*:福井県立恐竜博物館 1F) ※2022年撮影に肩甲骨を示す円を追加

ウサギの前肢は下腕部分が細く、橈骨と尺骨が弓なりになっており、橈骨と尺骨が交差する様に関節しているため、手のひら側を地面に向けて腕を着けることができます。

(ニホンノウサギ橈骨・尺骨/正面:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影)

恐竜の場合は腕の付き方が異なり、橈骨、尺骨は横並びに関節しているため、腕をひねって完全に手のひらを地面に着けるのは難しく、弓なりにもなっていません。ウサギ同じように四足歩行または、一時的に四足歩行する恐竜たちの橈骨、尺骨は展示されている標本や、骨格図を見る限りでは真っ直ぐに近い形をしているようです。

(カマラサウルス*橈骨、尺骨 / プロサウロロフス*橈骨、尺骨:福井県立恐竜博物館 1F 2020年撮影)

長さの比などには目を瞑り、前肢より長い後肢という部分だけに焦点を当てるのであれば、ほとんどの恐竜は前肢より後肢が長く、四足歩行する恐竜でも同様です。これは,恐竜が元々二足歩行の動物で、体重の増加や、重心*の変化で二次的に四足歩行になったこと等が関係しているそうです。

指の数では前肢5本、後肢4本がウサギの仲間の特徴であり、前後でこれと同数の指を持つ恐竜には(つの)(りゅう)*がいます。この特徴は原始的な仲間の特徴を引き継いでいるプロトケラトプス*や、派生的な仲間であるメドゥーサケラトプス*、トリケラトプス*でも見ることができ、他に(よろい)(りゅう)*のノドサウルス類*でもこの特徴を持っているようです。

(プロトケラトプス / メドゥーサケラトプス:福井県立恐竜博物館 1F 2021年撮影)

・5-3:後肢&腰回りの骨

ウサギの仲間の腰付近の背骨、腰前方部は横突起が発達して張り出し、そこで強いジャンプ力を生む発達した筋肉を支えています。

(ニホンノウサギ横突起:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影)

恐竜は胴のつくりが異なるため、一概には比べられませんが、横突起が発達している恐竜では、(りゅう)脚類(きゃくるい)*のジラファティタン*で、胴体の横突起が幅広くなっています。また、獣脚類のカルノタウルス*では、()(つい)*で横突起の発達がみられます。ただし、どちらもジャンプ力を生むためのものではないため、機能も形体も似ているとは言い難いかもしれません。

(カルノタウルス : 大阪ATCホール 特別展『ティラノサウルス展 ~T.rex 驚異の肉食恐竜~』2021年撮影)

ウサギの仲間で見られる脛骨と腓骨の一本化や、踵から先が大きく発達するといった特徴は恐竜ではみられません。恐竜の脛骨と腓骨は一本化しておらず、脛より下の部分では、ウサギが踵を着けて歩く(せき)行性(こうせい)*であるのに対し、恐竜はつま先立ちで歩く()行性(こうせい)*で、(そっ)(こん)(こつ)*も非常に単純化しています。

(ニホンノウサギ脛骨、腓骨:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影 / ティラノサウルス*脛骨、腓骨 / エドモントサウルス脛骨、腓骨:福井県立恐竜博物館 1F 2020年撮影)

6).お肉をつけたら

(ティラノサウルス生体復元ロボット:福井県立恐竜博物館 1F 2019年撮影)

先程までは骨格的な部分からウサギの仲間と恐竜を比べてきましたが、ここからは骨格以外の部分も見ていきます。

ただ、上述したように恐竜は基本的に骨だった部分しか化石として残りません。そのため、現生動物の解剖で得られた知見を元に、その姿が研究されてきました。

(ティラノサウルス:福井県立恐竜博物館 1F 2019年撮影)

・6-1:目

ウサギの目は真横につき、ほぼ360度見渡せる視野(しや)*を持っていますが、目が横向きにつくというのは植物食の動物に広く見られる特徴であり、植物食の恐竜も例外ではありません。ただし、視野はウサギほどには広くなく、爬虫類や鳥類(ちょうるい)*を参考にするのであれば、後方に死角があったと考えられます。

それでも広い視野を持っていたことに変わりはなく、横についた目で広い視野を確保し,天敵を発見しやすくしているようです。(おそ)われる立場になりやすい植物食の動物たちは、今も昔も同様の適応をしているようです。

・6-2:口

咀嚼は哺乳類に多い食べ方で、ウサギの仲間は前後左右に顎を動かして食べ物を口の中で物理的に破壊しています。しかし多くの動物は食べ物を丸呑みにしており、多くの恐竜も例外ではありません。

(ウサギの食事:フリー画像 photoACより)

例えば、肉食の獣脚類にとって口は武器であり、倒した獲物が大きい場合には解体にも使用しましたが、ちぎった肉は丸呑みだったと考えられています。植物食の恐竜の口はつみ取ることが役割であり、食べ物の物理的な破壊は、胃石が単体や体内から発見されていることから,(きん)()(()(のう))*でしていたと考えられています。

咀嚼する恐竜は鳥盤類(ちょうばんるい)*、特に鳥脚類のハドロサウルス類*が有名ですが、方法は哺乳類とは異なります。ハドロサウルス類は原始的な仲間が持っていた、頭部と下顎の骨同士の可動性を発達させ、口を上下に動かすたびに上顎骨が外側にわずかに回転し、上下の顎に何層にも生えた歯を互いにこすれ合わせることで植物を切り刻んでいました。

(ハドロサウルス*の頭:福井県立恐竜博物館 1F ※2020年撮影にプレウロキネシスのイメージを追加)

この骨の可動性をプレウロキネシス*、歯の構造をデンタルバッテリー*といい、この特徴を持ったハドロサウルス類は恐竜時代後半に北半球を中心に繁栄しました。植物食の動物にとって咀嚼は利用する植物の数を増やせる適応の1つであり、これが異なる系統の動物で、異なる方法で発達したことは非常に面白いです。

(エドモントサウルス 歯骨のデンタルバッテリー:福井県立恐竜博物館 1F2020年撮影)

・6-3:耳

哺乳類に特徴的な器官である耳介は、ウサギの仲間では長い者もおり、耳介を自由に動かして音を聞き取るほか、体温の調節に使いますが、恐竜や他の動物は耳の穴のみで耳介はありません。

(ニホンノウサギ : 千葉県立中央博物館 企画展『ほにゅうるい』2019年撮影)

恐竜の耳は骨格からでは判断が難しいですが、現生動物の解剖学的な情報から、目の後ろ、上顎と下顎の関節部より少し上と推定され、更にCTスキャンで内耳(ないじ)*の構造や、聞き取れる音域も推定されています。

(ティラノサウルス : 福井県立恐竜博物館 企画展『比べて楽しむ古生物の世界』※2022年撮影に耳の位置を追加)

耳介による体温調節は、汗腺(かんせん)*があまり発達していないためであり、体温が上昇した際に熱を血液で耳へ運び、空気にさらして体温を下げています。

(ニホンノウサギ : 千葉県立中央博物館 企画展『ほにゅうるい』※2019年撮影に体温調節のイメージを追加)

恐竜に汗腺はなく、鳥類と同様に体内の気嚢(きのう)*という肺に繋がった構造で空気を循環(じゅんかん)させ、効率的な呼吸に加え、体を冷ましていたとも考えられています。また、恐竜の頭部にあいている側頭(そくとう)(そう)*という穴にある血管系が、同様の構造を持つ現生鳥類やワニ類*を用いた研究から、放熱に役立っているという研究があります。加えて、ステゴサウルス類*の背中の板が、ウサギの耳介と似た役割をしていたとも考えられており、動物ごとに異なる体温調節の方法があるようです。

(ステゴサウルス類,ヘスペロサウルス*の背中の板 : 福井県立恐竜博物館 1F 2020年撮影)

・6-4:足の裏

多くの動物は地面に接する足裏部分に衝撃(しょうげき)を吸収する物を持っています。ウサギの仲間の場合には、クッションになる後肢の足裏には毛が生えており、それが音を消すための消音器や、積雪地域の種では雪に沈まないためのかんじき*、保温の役割も果たしているそうです。

(ニホンノウサギ:福井市自然史博物館 2023年撮影 / ニホンノウサギ:勝山市野向町龍谷の山中 2015年撮影)

哺乳類の毛とは異なり、恐竜の場合は羽毛*を持つものが発見されていますが、足裏まで生えていたという例はありません。ただ、積雪地域に生息している現生鳥類のライチョウは、ウサギと似た適応をしており、足裏にまで羽毛が生え、かんじきや保温の役割を持っています。

また、恐竜も肉質のクッションは持っており、皮膚(ひふ)印象(いんしょう)化石(かせき)*や足跡(あしあと)化石(かせき)*から、化石記録のある恐竜については、おおよその形も判明しているようです。そもそも多くの動物の足裏にあるのは肉質のクッションで、ネコなども肉球がそれにあたり、毛をクッションにしているウサギの仲間の方が珍しいようです。

(獣脚類の足跡化石:福井県立恐竜博物館 野外恐竜博物館 展示場 2019年撮影)

・6-5:尻尾

哺乳類の尾はバランスをとるためや、コミュニケーションなどに用いられているそうですが、ウサギの仲間ではバランサーとしての役割がなくなり尾が短くなっています。これは通常姿勢や重心の変化に伴うものであり、ウサギの仲間の場合は尾部が地面に接する機会の増加などが、要因の1つではないかと考えられているそうです。

(ニホンノウサギ尾椎:所蔵 福井市自然史博物館 2023年撮影)

恐竜の尾も、同じくバランサーの役割を持ち、腰付近を重心にして前後でヤジロベエ*のようになっています。ただ恐竜の中にも、獣脚類のオヴィラプトロサウルス類や、テリジノサウルス類*などで、骨格や姿勢の変化により尾が短くなっている恐竜がいるほか、竜脚類のブラキオサウルス*では、尾がなくなったとしても問題なく歩ける程には重心が前よりになっているとも考えられているそうで、尾が短くなっています。

(コンコラプトル*:福井県立恐竜博物館 1F 2019年撮影 / ブラキオサウルス:福井県立恐竜博物館 1F 2020年撮影) ※ブラキオサウルスとジラファティタンのコンポジット*

恐竜が尾をコミュニケーションに用いたのかは推測の域を出ませんが、尾が長い竜脚類のディプロドクス科*ではその可能性が考えられているほか、角竜の高くなっている尾はディスプレイに用いられたとも考えられています。鳥類では尾羽をコミュニケーションに用いる例が報告されているため、恐竜全体ではないにしても、尾を用いたコミュニケーションはあったのかもしれません。

(ズニケラトプス*:丹波市立丹波竜化石工房 ちーたんの館 2020年撮影 / ディプロドクス* : 大阪ATCホール 特別展『ティラノサウルス展 ~T.rex 驚異の肉食恐竜~』2021年撮影)

・6-6:体毛

ウサギの体毛の色にはカモフラージュの役割があり、積雪地域のウサギの仲間は(かん)毛期(もうき)*があり、夏は褐色(かっしょく)から(はい)褐色(かっしょく)ですが、冬には変化して白くなります。

((冬)エゾユキウサギ:フリー画像 photoACより)

恐竜の色については近年、保存状態の良い羽毛や皮膚の化石に残された、細胞小器官*のメラノソーム*の形からある程度推定されてきており、例えば、初めて色が推定された恐竜であるシノサウロプテリクス*では、首から背中にかけては(あか)茶色(ちゃいろ)から橙色(だいだいいろ)の羽毛を、尻尾の部分には赤系の色と白色の(しま)模様(もよう)があったと考えられています。しかし、これらの恐竜たちが季節とうで体色に変化があったのかは、わかっていません。

(シノサウロプテリクス:福井県立恐竜博物館 2F 2020年撮影)

ただライチョウでは、換羽(かんう)*によって季節で保護色を変化させているほか、冬の羽毛の保温性を高めています。さらに鳥類では、幼体*から成体*への成長過程で換羽によって色や模様を変化させ、風切羽等の成体に必要な羽毛を得るとった変化をするものが多く確認されています。また、繁殖期*に羽毛やクチバシ等を派手にする鳥類もおり、こういった変化は恐竜でも見られたのかもしれません。

((夏)蝶ヶ岳(ちょうがだけ)の雷鳥 / (冬)冬の雷鳥:フリー画像 photoACより )

また、爬虫類から見ると、恐竜も含まれる(しゅ)竜類(りゅうるい)*の仲間であるワニ類で、環境や明るさによって体色を変化させるものがいると報告されているほか、トカゲやヘビが含まれる(ゆう)鱗類(りんるい)*でも、威嚇(いかく)や体温調節のために色素の移動や、結晶構造で一次的に色を変えるものがいることが知られています。また、動物全般で見ると幼体から成体へ成長する際に、色や模様を変化させるものは多く確認されており、こういた色の変化が恐竜でもあった可能性は考えられます。

ただ、恐竜の生息していた中生代(ちゅうせいだい)*は全地球的に温暖な時代であり、ほとんどの時代に(ひょう)(しょう)*がなく、降雪地域も今よりもずっと少なかったと考えられているため、カモフラージュのために白くなる必要があったのかなど、色の変化について考えるには注意が必要です。

それでも当時から高緯度にあったアラスカの後期白亜紀*の地層*から、化石が発見されており、この恐竜たちは降雪のある長い冬や、(きょく)()*の中で過ごしていたと考えられるため、それに伴う色の変化があったのかもしれません。

7).最後に

卯年企画の1回目である今回は、「兎の形と、恐竜との比べっこ」と題して、ウサギの体の形と恐竜の形の比較を中心にし、頭から尻尾まで大雑把に見てきましたが、如何だったでしょうか。

結局のところ、序盤で述べた結論の通り、ウサギと恐竜はあまり似ていないということが分かっただけかもしれませんが、環境に適応した体色の変化などについて考えるきっかけ程度になれたらと思っています。また、何となくウサギ似とも言えなくもない、インキシボサウルスを紹介できたので今回は良しとしたいです。

系統的に離れていることに加えて、哺乳類の中のウサギと、恐竜類の複数の種というスケールもあっていないものを、解剖学的な知識も曖昧なままに比べてしまったため、その手のことに詳しい方からは怒られてしまうどころか、「意味がある行為なのか?」と疑問を持たれてしまう内容だったかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。

【名前】

・アナグマ:イタチ科の食肉類で、雑食性の哺乳類。ユーラシア大陸と日本に生息いている。

・アマミノクロウサギ:現生するウサギ科の中でも最も原始的な形体を持つウサギで、鹿児島県の奄美大島と徳之島のみに生息し、耳も短く、ウサギ跳びもしない。

・アロサウルス:アロサウルス科の代表的な大型肉食恐竜。ヨーロッパから北アメリカの後期ジュラ紀の地層から発見される。大型獣脚類の中では首が長い。手の第1指の爪が大きい。

・インキシボサウルス:原始的なオヴィラプトロサウルス類で、肉食が多い獣脚類の中で植物食と考えられている。中国の前期白亜紀の地層から発見されている。大きな前歯が特徴。

・ウサギ科:植物食の哺乳類。アフリカ大陸、ユーラシア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸に生息している。走力の高いノウサギ属と、複雑な巣穴をつくるアナウサギ属に分かれる。

・エドモントサウルス:ハドロサウルス類の中でも目立った骨質のトサカがないハドロサウルス亜科に含まれる大型の植物食恐竜。北アメリカ大陸の後期白亜紀の地層から発見されている。口先がカモのクチバシのように広がっている。

・オヴィラプトロサウルス類:原始的な一部の仲間を除き、歯のない獣脚類。雑食性から植物食の恐竜と考えられ、ユーラシア大陸、北アメリカの白亜紀の地層から発見されている。卵を保護したオヴィラプトル類の化石や、尾羽が見つかったカエナグナトゥス類の化石も見つかっている。

・カルノタウルス:アベリサウルス科の獣脚類の中では最大級の肉食恐竜。アルゼンチンの後期白亜紀の地層から発見されている。前後に短い頭骨や、目の上にある大きく飛び出した角が特徴的である。

・コンコラプトル:トサカを持ったオヴィラプトル類が多いなかで、トサカを持たない恐竜。モンゴルの後期白亜紀の地層から発見されている。

・シノサウロプテリクス:恐竜が羽毛を持っていたことを初めて示した、コンプソグナトゥス類の肉食獣脚類。中国の前期白亜紀の地層から発見されている。

・ジラファティタン:ブラキオサウルス科の竜脚類。タンザニアの後期ジュラ紀の地層から発見されている。アメリカのブラキオサウルスとは歯や顎、腸骨、大腿骨などで形体が異なっている。

・ズニケラトプス:発見されているなかで、最も古い角を持つ角竜、ケラトプス上科の恐竜。アメリカの後期白亜紀の地層から発見されている。

・ディプロドクス:ディプロドクス科の代表的な竜脚類。アメリカの後期ジュラ紀の地層から発見されている。長い首と尾が特徴的で、特に尾は他の竜脚類と比較しても長い。

・ディプロドクス科:アフリカ大陸、ユーラシア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸の中期ジュラ紀から前期白亜紀の地層で発見されている。面長で口先が長方形に近い形をしている頭が特徴的である。

・ティラノサウルス:最大級の肉食恐竜。北アメリカ大陸の後期白亜紀の地層から発見されている。頭骨や歯が特殊化しており、噛む力が強く、両眼視野も他の獣脚類より広い。

・テリジノサウルス類:変わった見た目をした植物食の獣脚類。ユーラシア大陸、北アメリカ大陸の白亜紀の地層から発見されている。水平から変化して体を持ち上げた姿勢や、長い首、小さい頭、前肢の爪が大きくなるのが特徴的である。

・トリケラトプス:ケラトプス科の派生的な2つのグループうち、カスモサウルス亜科に含まれる角竜。北アメリカ大陸の後期白亜紀の地層から発見されている。最大級の角竜で3本の角が特徴的である。

・ニホンノウサギ:日本の本州から九州に生息するノウサギ。積雪地帯に生息するものは換毛で体毛が白くなる。単独で生き、夜行性で特定の巣穴は持たない。

・ノドサウルス類:派生的な2つのグループのうち、尾の先にハンマーを持たない鎧竜。ユーラシア大陸、北アメリカ大陸の白亜紀の地層から発見されている。ミモオラペルタがノドサウルス類の場合、後期ジュラ紀まで遡る。肩トゲが発達するものも多い。

・ハドロサウルス類:カモのクチバシのように広がっている口先が特徴的な植物食の恐竜。目立った骨質のトサカがないハドロサウルス亜科と、骨質のトサカを持つランベオサウルス亜科に大きく分けられる。ユーラシア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸の白亜紀の地層から発見されている。

・ヒプシロフォドン:原始的な鳥脚類で、ヒプシロフォドン類の代表的な植物食恐竜。イギリスの前期白亜紀の地層から発見されている。前上顎骨に歯があるなど原始的な特徴的を持つ。

・ブラキオサウルス:ブラキオサウルス科の代表的な竜脚類。アメリカの後期ジュラ紀の地層から発見されている。大腿骨とほぼ同じ長さの上腕骨や、頭側から尾側に向かい傾斜をつけて関節する椎体が特徴的である。

・メドゥーサケラトプス:ケラトプス科の派生的な2つのグループうち、セントロサウルス亜科に含まれる角竜。アメリカの後期白亜紀の地層から発見されている。フリルの突起がフック状になっているのが特徴的である。

・ワニ類:正鰐類の1つ。後期白亜紀に出現し、アリゲーター上科、クロコダイル上科、ガビアル上科が熱帯から亜熱帯地域に生息いている。

【用語】

・かんじき:雪の上など不安定な地面を歩くための道具で、靴などの下に着ける。装着すると地面との接地面積が増えて体重が分散され、雪に深くめり込み難くなっている。

・コンポジット:複数のものを合成、組み合わせたものを表す言葉であり、一個体分の化石からではなく、複数の化石を用いて組み立てられて骨格標本のことを指して用いる。

・デンタルバッテリー:前後の小さな歯が何層にも重なっており、交換歯とともに一塊の臼のように機能する構造のこと。

・メラノソーム:メラニンを含む細胞小器官で、小胞というリン脂質でできた入れ物に、メラニン色素が詰められた粒のこと。動物の体色を決定し、メラノソームの形によって現れる色が異なる。

・プレウロキネシス:頭の骨が持つ可動性のなかでも、上顎を構成する骨の部分に可動性が備わったもののこと。口を閉じると、上下の歯が接触し、上顎が少し外向きに動いて、上下の歯が擦れ合うことで、切り刻むように咀嚼を行ったと考えられている。

・ヤジロベエ:日本の伝統的な玩具で、人の形を模しており、胴の先が細くなっている。胴からは左右に長く伸びた腕と、手の先に重りが着いており,これでバランスをとる。バランスが崩れても自然に元に戻る。

・羽毛:現生動物では鳥類だけが持ち、体表を覆う表皮が角質化したもの。恐竜でも発見されたことで、恐竜と鳥の関係についての考えを補強した。ケラチン質で、ディスプレイや保温、飛行等の役割もつ。

・横突起:椎体にある外側に向かって骨が突出する部分のこと。複数の筋肉が着く。

・解剖学:体の解剖を通してその形態や構造の理解を目指す学問のこと。

・鎧竜:アンキロサウリア類と呼ばれ、体の多くの部分が皮骨のプレートやとトゲに覆われていた鳥盤類の恐竜であり、上に伸びたプレートや、トゲが特徴的なステゴサウリア類(剣竜)と、他の原始的な仲間を合わせて装盾類というグループにまとめられる。鎧竜にはノドサウルス類とアンキロサウルス類に大きく分けられる。

・角竜:ケラトプシア類と呼ばれ、吻骨というこの仲間のみに発達するクチバシの骨が特徴的な鳥盤類の恐竜であり、プシッタコサウリア類とネオケラトプシア類を合わせたグループ。フリルの目立った発達はネオケラトプシア類に入ってから、角の発達はケラトプス上科に入ってから見られる。

・換羽:鳥類の古い羽が抜けて新しい羽が生えてくること。季節や成長に応じて、その一部または全部が生え替わる。

・換毛期:毛が生え替わる時期のこと。

・汗腺:汗をつくり出して表皮に送り出す器官のこと。エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、このうちエクリン腺が冷却の役割を担っている。温熱刺激によって全身を発汗させ、汗が蒸発する際に皮膚の表面から気化熱を奪うかたちで熱を放散し、体温が上がりすぎないように調節している。

・眼窩:眼球や、眼球に関連する神経や筋肉が入っている頭蓋骨の凹み部分のこと。 

・気嚢: 鳥類が備えている呼吸器官のこと。薄い膜でできた袋状の器官で、空気を吸う経路と吐く経路を分けており、新鮮な酸素を貯蔵する役割をもつ。鳥類の祖先である恐竜にも同様の器官があったことが研究によって示されている。

・極夜:一日中太陽が出てこない日のことで、日中でも薄明か太陽が沈んだ状態が続く。南極圏や北極圏で見られる現象である。

・筋胃:爬虫類や鳥類が持つ消化器官のことで、種子を食している仲間で特に発達しており、砂嚢や砂肝とも呼ばれる。鳥類が持つ2種類の胃である前胃と後胃のうち、後胃側が筋胃である。発達した分厚い筋肉と強い粘膜をもち、内部には砂礫が貯えられて、収縮運動によって食べた物を物理的に破壊する。

・系統:生物の特徴を元に、生物間の関係性を示した道筋のこと。

・肩甲骨:四肢動物の肩帯を構成する板状の骨で、体の両側に位置し、肋骨の外側に靱帯と筋肉によって付着している。

・肩甲棘:肩甲骨の背面を上下に分けるように際立った棒上の隆起のこと。肩関節の運動に関連する筋肉の付着する部である。

・後期白亜紀:地球の地質年代のひとつである白亜紀を、二つに分けた内の新しい方の時代であり、中生代の最後の時代。約1億50万年前から約6600万年前のこと。

・更新世: 地球の地質時代の一つであり、第四紀の一つ目の世のこと。新生代の中では2番目に新しい時代。約258万年前から約1万1700年前のこと。

・砂嚢:基本的には筋胃を参照。魚類や無脊椎動物にも見られる器官。

・細胞小器官: 細胞の内部は分化した形態や、機能を持つ多くの構造物で埋め尽くされており、この構造物の総称のこと。それぞれ細胞の活動に必要な特定の機能を持っている。

・始新世:地球の地質時代のひとつであり、古第三紀の二つ目の世のこと。新生代の中では2番目に古い時代。約5600万年前から約3390万年前までの期間。新生代の第二の時代。

・指行性:踵を浮かせた爪先立ちの状態で直立して歩行することであり、趾行性とも書く。爪先立ちになることで脚の長さを稼ぎ、高速での移動において有利と考えられているほか、同様の筋肉量であれば、踵を着ける蹠行性の動物よりも、体重を支える効率が良いと考えられている。

・視野:目を動かさないで見える範囲のこと。

・耳介:哺乳類にみられ、耳のうち軟骨に支えられて、外耳孔から外に張り出ている部分のこと。外耳の一部であり、音を集めるほか、体温調節の機能を持つものもいる。

・尺骨:四肢動物の前肢を構成する骨であり、下腕の二本の長い骨のうち、太い骨のこと。橈骨と平行に並んでいる骨。

・主竜類:現生動物では鳥類やワニ類が含まれる双弓類に属する爬虫類の1グループのこと。主竜様類、鱗竜形類、コリストデラ類などからなる双弓類のうち主竜様類の中から、主竜形類を経て出現したのが主竜類である。主竜類は鳥頸類と偽鰐類がおり、このうち鳥頸類には翼竜類や恐竜類などが含まれる。

・獣脚類:竜盤類に属する恐竜の1グループのことで、細長い体で比較的後肢が長く、すばやく行動ができ、二足歩行の動物である。肉食ものが多いが、魚食や雑食、植物食など様々な食性のものがおり、小型から大型と体格も多様な恐竜のグループで、鳥類も獣脚類に含まれる。

・重心:ここでいう重心とは、身体重心のことであり、上肢や下肢、頭部などの体全ての質量が合わされた点のこと。

・消音器:発生した音を軽減、小さくする装置のこと。

・上顎骨:下顎骨に次いで大きい頭蓋骨の構成要素のことであり、上顎の大部分をつくっている皮骨性由来の骨のこと。

・成体:十分に成長し、生殖が可能となった動物の個体のこと。

・石炭紀:地球の地質時代のひとつであり、古生代の5番目の紀のこと。約3億5890万年前から約2億9890万年前までの期間。名前の通り、この時代の地層から多くの石炭を産出する。大きなシダ植物が大森林を形成した。

・前上顎骨歯:頭蓋骨の構成要素で、多くの動物の上顎の先端に存在する皮骨性由来の骨に生えた歯のこと。

・双弓類:羊膜動物に含まれる大きなグループのひとつのことで、頭蓋骨の左右に2つずつ側頭窓という穴をもち,有鱗類や主竜類などが含まれる。

・側頭窓:羊膜動物に見られる眼窩の後方、側頭部に開いた頭骨の孔ことで、顎の筋肉を収納するなどの役割がある。羊膜動物の分類にも役立てられてきたが、正確には系統を反映していないことが分かっている。ただし、便利ではあるため今も用いられることが多い。

・足根骨:かかとの骨のこと。恐竜は距骨と踵骨のみで、3本の中足骨と関節している。

・足跡化石:堆積物の中に残った生物の印象である生痕化石のひとつ。単体で見つかるものを足印、連続して歩いたものを行跡という。

・単弓類:羊膜動物に含まれる大きなグループのひとつのことで、頭蓋骨の左右に1つずつ側頭窓という穴をもち,哺乳類などが含まれる。

・地層:礫や砂、泥、生物の死骸、火山灰などが層状に堆積したもの。

・中生代:地球の地質時代のひとつ。古生代と新生代の間の時代で、約2億5190万年前から約6600万年前までの期間。恐竜類や翼竜、魚竜、長頸竜類、モササウルス類などの爬虫類や、アンモナイトの仲間が繁栄したことで有名な時代。

・鳥脚類:鳥盤類の角脚類に属する恐竜の1グループのことで、小型から大型のものまで多様な恐竜のグループで、完全な植物食の恐竜であり、恐竜類の中でも最も標本数が多く多様で、最も長い期間生存したグループである。

・鳥盤類:恐竜類を構成する二つの大きなグループのうちのひとつで、恥骨が後ろを向く骨盤が、現在の鳥の骨盤に形が似ていたため名付けられた。ほとんどが植物食の恐竜で装盾類、鳥脚類、周飾頭類に分けられ、これらのグループも細かく分けられる。

・鳥類:リンネ式の階層分類の上では鳥綱というグループにまとめられてきたが、恐竜との関係が明らかになるにつれてリンネ式では分類が難しくなり、分岐分類の上では獣脚類の1グループに含まれる。現生鳥類では、飛翔能力の高い仲間が多いことや卵生であること、羽毛をもつこと、歯がなくクチバシをもつことなどが特徴として上げられる。

・内耳:鼓膜の内側には中耳があり、それにつづく器官のこと。聴覚に関わる蝸牛と、体の平衡感覚に関わる前庭、三半規管と呼ばれる器官がある。

・繁殖期:動物が繁殖行動を行う時期のことで、季節と関連して周期的に訪れることが多い。

・皮膚印象化石:堆積物の中に残った生物の印象である生痕化石のひとつで、恐竜の皮膚にはウロコで覆われているものと、羽毛で覆われているものの2種類がある。皮膚が泥に押し付けられてできた化石や、ミイラ化した皮膚の跡が保存された皮膚痕化石などがあり、化石によっては、皮膚の細部の様子やケラチン、色素細胞などが保存されている場合もある。

・非鳥類型恐竜:鳥類が獣脚類の1グループに含まれると考えられるようになったため、鳥類を除いた全ての恐竜を言い表す際に用いる用語。

・尾椎:脊椎動物の脊椎を構成する要素のうち、尾側の末端の部分のこと。

・氷床:大陸氷河のうち5万平方km以上の面積をもつ氷河のこと。現在は南極大陸氷床と、グリーンランド氷床のみが存在する。

・門歯:哺乳類の歯のうち、歯列の中央にある歯のことで、歯冠はのみの様な食物をかみ切ることに適した形をしており、人間では切歯と呼ばれる。

・有鱗類:トカゲ類やヘビ類が含まれるグループのことで、ムカシトカゲ類と合わせて鱗竜類という双弓類に属する爬虫類の1グループをなし、現生爬虫類の大半を占める。首長竜などを含む鰭竜類と合わせて鱗竜形類にまとめられる。

・幼体:生殖が可能になる前の状態の動物の個体のこと。

・羊膜動物:脊椎動物の卵にみられる、液体を保持するための膜である羊膜を備えた卵を産む生物のことで、有羊膜類ともいう。

・竜脚類:竜盤類に属する恐竜の1グループのことで、長い首と尾をもち、四足歩行の植物食の恐竜であり、全長が30mを超える史上最大級の陸上動物を含むグループである。原始的な仲間と竜脚形類をなし、小型のものは1m程度で体格に差がある。

・咀嚼:摂取した食物を歯で咬み、粉砕すること。磨り潰すのは哺乳類に限られ、ハドロサウルス類などの恐竜で見られるものは、切り刻むといった咀嚼である。

・哺乳類:単弓類の生き残りであり、羊膜動物の1グループである。汗腺や乳腺があり、乳で子育をすることや、皮膚に毛をもつことが特徴的である。体内の胎盤で子を育てて出産する有胎盤類、体外部の育児嚢で子を育てる有袋類など、現生哺乳類の多くは胎生であるが、単孔類は卵生である。

・橈骨:四肢動物の前肢を構成する骨であり、下腕の二本の長い骨のうち、細い骨のこと。尺骨と平行に並んでいる骨。

・爬虫類:双弓類と一部の原始的な仲間が含まれる羊膜動物の1グループで、現生爬虫類は主竜類と鱗竜類である。多くの爬虫類は卵生だが、絶滅したグループや、有鱗類の中には胎生の仲間もいる。

・脛骨:四肢動物の後肢を構成する骨であり、下腿の二本の長い骨のうち、太い骨のこと。腓骨と平行に並んでいる骨。

・腓骨:四肢動物の後肢を構成する骨であり、下腿の二本の長い骨のうち、細い骨のこと。脛骨と平行に並んでいる骨。

・蹠行性:踵を地面に着けた状態で歩行することであり、足裏全体を地面につけるため、安定して直立することができるほか、木登りや高速での移動時の方向転換などに有利と考えられている。

・靱帯:関節において骨と骨を連結する紐状や、帯状のコラーゲン線維組織のこと。関節の強化と安定、関節運動の誘導、過度の運動に対する制動などの役割がある。筋肉と骨をつなげる腱とは区別される。

【参考】

〈ネット〉

・AFP BB News.「カメレオンの色変化の仕組みを解明、スイス大」.2015.

https://www.afpbb.com/articles/-/3042151 (参照2023-01-06)

・LIVE SCIENCE.「Fossil of Oldest Rabbit Relative Found」.2022.

https://www.livescience.com/2381-fossil-oldest-rabbit-relative.html (参照2023-01-05)

・NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版.「カメラは見た! 実は肉食系でもあるノウサギ」.2019.

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/011600036/ (参照2023-01-05)

・NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版.「動物大図鑑 カンジキウサギ」.2014.

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/428823/ (参照2023-01-06)

・Science Daily.「New dinosaur discovery suggests new species roosted together like modern birds」.2017.

https://www.sciencedaily.com/releases/2017/08/170824151039.htm (参照2023-01-05)

・円山動物園だより.「真っ白の冬毛 エゾユキウサギ」.2023.

https://www.ecochil.net/article/20054/ (参照2023-01-06)

・環境省 北海道地方環境事務所.「アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区] 換毛の時期」.2008.

https://hokkaido.env.go.jp/blog/2008/10/09/  (参照2023-01-06)

・環境省 政策 自然環境・生物多様性 希少な野生動植物の保全「アマミノクロウサギ」.

https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/amaminokurousagi.html (参照2023-01-05)

・鹿児島県教育委員会HP.「アマミノクロウサギ」.2022.

https://www.pref.kagoshima.jp/bc05/hakubutsukan/tennen/kuni_tokubetu/07amaminokurousagi.html (参照2023-01-05)

・日本地質学会.「【国際年代層序表】地質系統・年代の日本語記述ガイドライン」.2021.12.2.

https://geosociety.jp/name/content0062.html (参照2023-01-06)

・立山ライチョウ見守りネット.「保護色/換羽」.

https://raicho-mimamori.net/jp/ecology/moult.html (参照2023-01-06)

〈書籍〉

・D. E. Fastovsky・D. B. Weishampel.『恐竜学入門』.東京化学同人,2015,400p

・Darren Naish・Paul Barrett.『恐竜の教科書』.創元社,2019,240p

・Ernest Thompson Seton.『美術のための シートン動物解剖学』.マール社,1997,159p

・G.Masukawa.『新恐竜骨格図集』.イースト・プレス,2022,160p

・Martin G. Lockley・松川正樹・小畠郁生.『足跡でたどる恐竜学』.丸善出版,1991,172p

・ティラノサウルス展 ~T.rex 驚異の肉食恐竜~.福井県立大学恐竜学研究所・福井県立恐竜博物館,2021.

・吉田賢治.『頭骨大図鑑Skulls』.アプリスタイル,2021,256p

・恐竜戦国時代の覇者!トリケラトプス~知られざる大陸ララミディアでの攻防~.大阪市立自然史博物館,2014.

・恐竜博2019.国立科学博物館,2019年.

・獣脚類 ―鳥に進化した肉食恐竜たち―.福井県立恐竜博物館,2018年.

・富田京一.『ホネホネ動物ふしぎ大図鑑』.日本図書センター,2018,164p

〈論文〉

・Amy M. Balanoff., Xing Xu., Yoshitsugu Kobayashi., Yusuke Matsufune., Mark A. Norell. 2009. Cranial Osteology of the Theropod Dinosaur Incisivosaurus gauthieri (Theropoda: Oviraptorosauria). American Museum Novitates ,(3651)1-35.

・Casey M. Holliday., William Ruger Porter., Kent A. Vliet., Lawrence M. Witmer. 2019. The Frontoparietal Fossa and Dorsotemporal Fenestra of Archosaurs and Their Significance for Interpretations of Vascular and Muscular Anatomy in Dinosaurs. The Anatomical Record, Volume 303, Issue 4, 1060-1074.

・Gregory F. Funston., Tsogtbaatar Chinzorig., Khishigjav Tsogtbaatar., Yoshitsugu Kobayashi., Corwin Sullivanand Philip J. Currie. 2020. A new two-fingered dinosaur sheds light on the radiation of Oviraptorosauria. Royal Society Open Science, Volume7, Issue10.

・Lindsay E. Zanno., Peter J. Makovicky. 2010. Herbivorous ecomorphology and specialization patterns in theropod dinosaur evolution. PNAS, Vol.108, No.1 , 232-237.

・Mark Merchant., Amber Hale., Jen Brueggen., Curt Harbsmeier., Colette Adams. 2018. Crocodiles Alter Skin Color in Response to Environmental Color Conditions. Scientific Reports, 8, Article number: 6174 .

・Nicola Saino., Maria Romano., Andrea Romano., Diego Rubolini., Roberto Ambrosini., Manuela Caprioli., Marco Parolini., Chiara Scandolara., Gaia Bazzi., Alessandra Costanzo. 2015. White tail spots in breeding Barn Swallows Hirundo rustica signal body condition during winter moult. IBIS international journal of avian science, Volume157, Issue4 722-730.

・栗山 武夫.オカダトカゲの色彩パタンの進化:捕食者に対応した地理的変異.日本生態学会誌.2012,62巻3号,p.329-338.

・杉田昭栄.鳥類の視覚受容機構.バイオメカニズム学会誌.2007,31巻3 号,p.143-149.

・大津正英.トウホクノウサギの生態にかんする研究 第3報 体毛変化に及ぼす要因.日本応用動物昆虫学会誌.1967,第11巻 第2号,p.37-42.

〈その他〉

・〈事例〉ウサギ類の系統関係 ―遺存固有状態のアマミノクロウサギ―

・恐竜復元教室.「ジラファティタン編」主催:山本聖士,2019-02-19.

・南アルプス ユネスコパーク.「ライチョウってどんな鳥?」.静岡市環境創造課.

【登場した博物館】

千葉県立中央博物館

丹波市立丹波竜化石工房 ちーたんの館

福井県立恐竜博物館

福井市自然史博物館

次回予告

第2回:ウサギの食べ物と、恐竜との比べっこ ~ 中生代と新生代のサラダ ~